Bパート 中

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 薫はもう一度敵船を見るとその姿が大きく見えていた。それは、富士越の港に停泊していた黒鉄の飛空艇だった。 「そんな……」  ハレミは蒼の頭を優しくなでた。 「昨日の今日で、地上から富士越まで登って来たということは飛空艇を使わない限り早く来られない。五千万の大金はすぐに依頼を引き受けさせたいためだったんだろう」 「えっ、じゃぁ初めから……」 「船ごと沈める気だったってことさ。今ここでこの子を海に放り出したところで結果は変わらないだろう。それになんか、うじゃうじゃ出てきやがった」  黒鉄の飛空艇の前面が口を開き、中から小型戦闘機が飛び出してきた。あの黒鉄は母艦ってことか。絶対防御の不沈船。面白いじゃないか。  薫の心は高鳴った。  そこに若いクルーが一人息を上げながらやってきた。 「船長! 無事でしたか。敵船がやってきます」 「わかってる」  薫は貨物室にある集音器に向かって、 「ロウジン。機関は無事か?」 『セリパラ号は飛んでいるぞ。問題はない』  しわがれた男の声が返ってきた。 「このまま遠深黒海に突っ込んでも大丈夫か?」
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