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会長らから少し離れた席の揚羽黄柚子が手を挙げて言った。周囲は黄柚子を見た。何か物珍しい目で。薫はそんな生徒会メンバーの後方から話を伺う。
「揚羽。どうしてそう思う?」
会長が問うた。
「はい。蜘蛛手先輩の家柄といいますか、隣町ではかなりの名家なんです」
黄柚子は、書記ノートの上でペンを握ったまま、いつでも書けるようにしていた。
「それは俺らも知っている。三年の中じゃ有名な金持ち息子だからな。それで?」
「世間体には名家として知られているようですが、裏では悪い噂が絶えないと聞いています……」
そう言って黄柚子は、目を伏せて黙り込んでしまった。
「悪い噂か。名家なら悪癖もありそうだな。蜘蛛手紘一と接していて、それほど悪いことに手を染めているとも思えないが……」
「んー、でも気高いところや高圧的な発言はあったけど」
副会長が答えた。
「知れればテレビドラマにでもなる悪行高き名家。それにしても、なぜそんな裏事情を知っているんだ、揚羽」
「はい。私の家と蜘蛛手家は昔からお付き合いがありまして、込み入った話はこちらにも入りやすいんです。詳しくは言えませんけど……」
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