Bパート 後

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「うるさい。依頼人が用意した船なのか、理由もわからず俺らは襲われた。しかし、不沈船と噂された船をあの子と俺らは落とした訳だ」  薫も蒼を見上げた。 「その理由ですが、おそらく戦闘で使用してみるという実戦訓練だったのかもしれません。ただ、荒れ狂う遠深黒海に来るとは思ってなかったはずでしょう」  イノガリも蒼を見た。 「セリカ・パラノイド空賊団を狙ったのが最大の敗因だ。多額の先払い報酬金は手元にある。今さら依頼もクソもねぇ」  薫は肩から下げていた銃を宙に浮いている蒼に向けた。 「何してるの、薫ちゃん!」  ハレミは怒鳴った。けれど薫は銃を降ろさない。蒼も銃口を向けられていることはわかっていた。 「楯葉蒼。生きるも死ぬもここでは自由だ。お前は死にたいか。それとも生きたいか。選べ」  その薫の言葉で歓喜に包まれていたセリパラ号は嘘のように静まり返った。全員が蒼に注目した。 「……」  蒼の唇は震えている。 「……」  蒼は一生懸命、口を開けた。 「……わ、わたしは」  蒼は大きく息を吸い込んだ。
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