第7章 飼い主 四季野牡丹 1

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「面倒見のいい牡丹さんは、自分で自分の面倒を見てしまおうと考えたのかもしれない。病院にくる前までは、一人で全てを抱え込んでいたでしょ。体力、精神ともに限界を超えてしまい、倒れてしまったわけだけど」 「それが私の見た世界に投影されていたんですね」 「牡丹さんの心を見てくると、そう。自分で自分の面倒も見てしまえという一方で、牡丹さんは助け、救いを求めてもいるんだ」 「えっ、私が助けを求めている?」  牡丹は驚いて復唱した。夢の中で自分が助けを求めることなどしただろうかと、一瞬頭の中を巡らせた。 「たぶん、自分では気づくことはできない深い心の中にそれはあると思う」  薫がそう言うと、牡丹はふと下を向く。  自分の心の海に飛び込んでみた。海面は透き通っていて見渡すことはできるが、すぐ下は真っ暗でどこが底で、どのくらい深いのかもわからない。思い切って潜っても思うように体は沈まない。牡丹は息苦しくなって海中から顔を出した。
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