第7章 飼い主 四季野牡丹 1

6/8
前へ
/193ページ
次へ
「具体的に夢の中のことでいえば、蝶の女の子たちの面倒を見切れなくなってしまたんだ。結果的には、牡丹さんを目覚めさせたんだと思う。臨海を突破したことで、ようやく牡丹さんは助け・救いを求めるようになった」 「私はそういう風に思ったことないと思います」  牡丹が言うと、薫は笑顔で頷いた。 「うん。俺もそうだと思う。では、牡丹さんの物語に話を移してみよう。深い心の中というのは、薫少年のいわゆる夢の中のこと。いつも蝶の女の子が出てくる世界だ」 「でも、そこには私は登場していませんよ」 「うん。さっき言ったけど、薫少年は今の牡丹さんの写し鏡。薫少年の見る夢も牡丹さんの世界なんだ。簡単に言うと、建物の一階が今の牡丹さんで、地下二階が看護師の牡丹さんと薫少年がいる病室。地下三階が薫少年の見る夢の世界。たとえ、牡丹さん自身が登場人物として登場していなくても、すべては牡丹さんの心を内包している」 「具体的にどういうことですか?」  牡丹は首をかしげる。薫はピン止めされていない一枚のティッシュペーパーを標本ケースから取り出した。それは今日、牡丹が起きた時に手に握っていたもの。 「これだよ」
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加