第7章 飼い主 四季野牡丹 1

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 薫はティッシュを牡丹に見せた。牡丹は一瞬目をそむけたが、あらためてそれに視線を向ける。 「ティッシュ……。それとも蝶の羽が生えた女の子?」  牡丹は半信半疑で答えた。 「そう、蝶の羽が生えた女の子。もう一人の牡丹さんだ」 「もう一人の私……」  牡丹はまじまじと薫の持つティッシュを見る。そのティッシュは寝間着姿の自分へと変化し、白い蝶の羽が花を咲かせるように開いた。薫の持つティッシュが牡丹の目にそう映った。 「物語の中で、蝶の女の子たちは薫少年と接触することで大きくも小さくも助けられたと思うんだ。どのお話も薫少年が出てくる。これって、蝶の女の子である牡丹さんが薫少年という助けを求めていたという風にとれる」 「先生を?」 「んー、俺ではないと思うな。夢の中だから薫少年は、やはり牡丹さんだ」 「そうですか? どのお話も薫少年は女の子を導くような流れでした。昔の自分みたいでしたけど、薫少年と私は全然性格も違います」 「夢の中の薫少年は、今の牡丹さんの憧れ、理想像ではないだろうか。確証できないけどね」
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