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「どうして蝶の羽が生えていたんですか? それにも何か意味がありますか?」  牡丹が聞くと、薫は少し困った顔をした。 「人は心の中にもう一人の自分がいる。それはとてもデリケートなものだ。そう、(さなぎ)のようにずっと静かにしている。成長しないんだ。アクシデントがなければ一生蛹のまま。  でも蛹にはスイッチが仕掛けてある。そのスイッチというのが、蛹を羽化させるスイッチなんだ。それを押すと、牡丹さんの物語に出てきた蝶の羽の女の子が生まれるんだ」 「スイッチを押してしまうと、私みたいになるんですね」  と、牡丹は落胆してしまった。 「一概には言い切れないけれどね。心に火薬が積もりたまっていて、ある時スイッチが入って火薬に点火。そして、心が爆発する。そういったアクシデントがなければ、蝶にはならないし、心が爆発することもない。  でも、人である以上はアクシデントと背中合わせでいる。上手く回避できる人もいれば、そうでない人も、もちろんいる。耐えきれず自らスイッチを押してしまう人。他人に押されてしまう人。はたまた時限式の人。逃れられないこともある」
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