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「それ、なんとなくわかります。経験しているからかもしれません」  牡丹は、薫の持つ標本ケースに自ら手を伸ばし、薫から受け取る。ガラス板はなく、直に自分の作ったティッシュコレクションを見つめた。 「私、子供の頃は何かできずに困っている子がいたら助けていました。一緒に手伝ってあげる感じで。先頭にたってどこかを目指すというより、皆と一緒に完成や成功を目指すことが好きでした。でも成長して行くに連れて、自分という壁にぶつかってしまうんです。  進路や将来やりたいこと、仕事、人生をどうやって歩んで行くのか。何も思いつくことはなく、私はつくづく自分がないなって思ってました。高校まで周囲に上手く溶け込めていたんですが、大学生になるとそうもいきません。集団行動はしても、行きつくところは個人。自分でした。私には何もないのに、誰かと居ようものなら、個人を演じるようになってました。
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