エピローグ

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エピローグ

「遅くなってしまったな。ギリギリだな」  雨の中、薫は傘をかぶり、時計を確認した。  賑やかな駅前を少し離れた所までやってくると、雑居ビルが立ち並ぶ。一方通行の道路に面したビルの一階はお店が並ぶ。コンビニやラーメン店、雑貨店等々。  その一画に小さな画廊があった。入口横の壁に、画廊・セリカ・アートヤードと書かれたプレートが貼り付けられていた。  薫は入り口の軒先で傘を閉じた。ガラス張りの入口からは中が見え、何となくどんなものが展示されているのかがわかる。  その入口には『四季野牡丹展・少女蝶々の箱』と題されたポスターが貼ってあった。それには牡丹が、がむしゃらに作っていた作品の一つがメインイメージとして写っていた。  一週間前、セリカ・アートヤードを運営する知人から連絡を受けた。画廊が空くから誰か展示する人はいないか、ということだった。  その期間だけずっと空いていて誰も入ってくれず困っていたらしく、閉めてしまうのはせっかくの機会がもったいないとのことで。お金の面で、ということではないらしい。
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