エピローグ

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 その作品は、下部四分の一くらいに校舎の屋上と階下一階分が厚紙で作られていた。屋上を囲う柵は串を均等に切って色を塗り、作られていた。学生服姿の揚羽黄柚子は黄色の羽を背に広げ、宙を飛んでいるように下から棒で支えられ、静止していた。牡丹の世界の一端が表現されている。  人物は紙粘土で形作り、顔の凹凸もしっかり出ている。肌が露出する部分は肌色の布が当てられ、服も布で仕立てられていた。髪の毛も似た毛の素材を使って表現され、人物は全体的にやわらかく優しい印象を受けた。羽は厚紙で型抜きされ色が塗られていた。  薫は隣に足を進めた。 「2.赤星稲穂」と題された作品は、箱全体に枯れ木が何本も立てられ、その林の中に赤い羽を広げた少女が立っていた。学ランにスカート姿で刀を構えるその女の子は、勇ましくもあり美麗であった。  次へ進む薫。 「3.志染紅子」は、箱に向かって左側が真っ白な空間になっていて、そこにはビデオテープを模した物がいくつも散乱している。  右側は青い空間になっていて海の波が打ち寄せていた。その打ち寄せる波は、白い紙をくしゃくしゃにして細長く丸めて表現されている。
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