エピローグ

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 紅子はその海へ飛び出すようにオレンジ色の小さな羽を羽ばたかせながら飛び立とうとしていた。  次は「4.屋久島るみ」。  丘の上のように土が盛られ、これもまた枯れ木が数本立てられていた。夕陽の光に包まれているように背景はオレンジ色の紙で覆われている。るみはTシャツ、短パン姿に青い羽を片羽だけ広げてこちらに手を伸ばしていた。  次の作品は屋久島るみの向かい、薫の背中側にあった。画廊の奥は関係者以外立ち入り禁止になっていて、順路としてはここで折り返す形になっている。 「5.褄黒白絵」の作品は、いままでの作品と趣が異なり、箱の正面以外は黒い紙で覆われていて、白絵は箱の中央に浮いていた。  白い羽は蜘蛛の巣にからまり、白絵の体は一角から伸びた細いプラスチック製の鎖に巻かれていた。また数本の鎖が下に落ちている。これは白絵から鎖が外れたことを表現しているのだろうと薫は思った。 「6.楯葉蒼」は、見るからに空を飛んでいる様だった。下面には雲を模した綿が敷かれ、青い背景の空に向かって手を広げて舞う蒼がいた。
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