エピローグ

5/9
前へ
/193ページ
次へ
 薫はここで終わりかと思っていたが、まだ先に二つ作品があった。次へ足を進めてみると、「7.四季野牡丹(未完成)」とあった。  箱の中央で、真っ白の人物が真っ白の羽を生やし、膝を抱えて座っているだけだった。その人物は紙粘土が乾いた状態のままで、色も塗られていない。  作品が未完成といっているのか。  それとも牡丹自身がまだ未完成であることを伝えているのか、とも受け取ることもできる。薫は面白いなと思って微笑んだ。  そして最後の作品は、「0.少女蝶々の箱」というタイトルの見慣れた標本ケースがそこに置かれていた。それにはちゃんとガラス板がはめ込まれていた。蝶を模したティッシュペーパーが虫ピンで止められている。作品の元になった牡丹の心が飾られていたことに薫は驚いた。  まさかこれを展示するとは……。これは牡丹が隠しておきたいものだろうと思っていたのに……。 「先生! 来ないのかと思っちゃいましたよ」  画廊の奥から出てきた牡丹が声をかけてきた。 「ごめんね。予定が押しちゃって。それにしても素晴らしい展示になったね」 「本当ですか?」
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加