エピローグ

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 牡丹は嬉しそうに笑った。こんな笑顔を見るのは彼女と出会って以来初めてではないだろうか。薫も嬉しくなった。 「驚いたよ。これがここに置かれていて」  と、薫は標本ケースを指差した。 「私の原点でもあるし、少女蝶々はこの箱から広い所へ移動したという意味も込めて置きました」 「牡丹さんの答えをこういう素晴らしい形で見れて良かったよ」 「ふふっ。私もです」  牡丹はまた笑顔を薫に見せた。 「先生。ちょっと不思議なことがあるんです。これ、見て下さい」  牡丹はそう言って、標本ケースの隣に広げて置いてあったノートを手に取った。 「見てくださったお客さんのメッセージノートなんですが」  薫はこのノートの何が不思議なのかわからなかった。 「一つずつメッセージを見ていって下さい」  困惑する薫に牡丹はノートを手渡した。薫は一ページずつメッセージを読んでいく。  不思議な世界。五番の黒の箱が怖かった。また展示会があれば見に来たいなど、それほど数は多くないが、メッセージが書かれていた。特に不思議と思えることは書かれていない。
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