Bパート 後

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 黄柚子は持っていたカッターナイフの刃を出して、ウィッグのポニーテールを根元からためらいもなく切った。そして、冷たい風が舞う宙に切ったウィッグを投げ捨てた。一瞬にして風がウィッグ一本一本をかっさらって行き、バラバラに散って行く。それらは次第に風に乗り、校舎の裏手へと流れて行った。  黄柚子の目つきが鋭くなった。 「あの男があんなことを言わなければ、私は何も意識することはなかったのに。なのにアイツが『尻尾で何を隠しているんだ』って言ってきて、私の髪を持ち上げた。そして、マジマジと後ろの首を見てきた。私はそこを見られたくなかった。馬や猿、動物のように尻尾でお尻を隠して守っていた訳ではないけど、私は隠す行為をしていた。小さい頃からずっとポニーテールだったからそれ以外の髪型にするのは抵抗があった。でも、友達は私の後ろ首のことは誰も気づかなかった。アイツの、蜘蛛手紘一の誤ったたった一つの行動が私の心を傷つけた。いずれ知る運命にはなっていたのに」  黄柚子は薫に背を向け、首を少し前に傾けた。白い肌の首後ろにあざのようなものがある。それは蝶々の形をしていた。
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