Bパート 後

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「アイツは見ただけでなく、この紋章を触ってきた。そして、押した……」  黄柚子が薫に向き直ると、黄柚子は瞳に涙を溜めていた。今にでもこぼれ落ちそうだった。 「……もう私、隠しておけない。全部しゃべって楽になりたい。最後に私の醜い姿を見せてあげる」  そして、涙をこぼしながら語る黄柚子を薫は冷静に見つめていた。 「普通の人として、悩んでいることがどれだけ幸せなのか。私はそうなりたかった。お父さん……お母さん……」  黄柚子は首後ろに手を回し、蝶型の紋章を押した。黄柚子は全身の痛みをこらえているように身体を震わせ、悲鳴か喘ぎ声ともつかない声を出した。そして、背中からアゲハチョウの羽が黄柚子の身の丈以上にバッと一瞬で広がった。まるで黄柚子の体から風を巻き起こすような勢いだった。  薫はその突風に押され一歩足を下げ、踏ん張った。  上の羽は直角三角形が向かい合ったような状態で、下の羽は扇を広げて一カ所だけシッポのように長く伸びた部分がある。その黄色い羽は黄柚子の一部だった。 「なぜ、そんな羽が……」
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