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「花咲君も見たでしょ。羽が出てくる瞬間を。アイツは何も考えず私の背後で紋章を押した。羽の出てきた勢いで、アイツは吹き飛んで頭を強く打って死んだわ。そして、この羽で空を飛んだ。死体を山に捨てに――」
「……」
「この羽のせいで私はけがれてしまった。いいえ、この羽自体がけがれよ。こんな醜い私をわかって好きになってくれる人なんているのかしら。こんなおかしな私の体を抱いてくれる人なんて――」
「そんなことないさ!」
薫は笑って黄柚子を見つめた。そして、黄柚子の横を通り越し、フェンスに歩み寄った。
「大丈夫。次の瞬間で、揚羽黄柚子の羽は生まれ変わる。安心してくれよ!」
黄柚子には薫の言っていることが理解できなかった。
次の瞬間、薫はフェンスを飛び越えると、何の躊躇もなく校舎のへりから自らの意思で飛び降りた。
「え! 花咲君!」
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