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校舎は五階建て。下はコンクリート。考えなくても薫がどうなるかくらいわかっている。黄柚子は考えるまでもなかった。気づいたら羽を羽ばたかせ、落下する薫を追っていた。蝶々の優雅さを気取る暇はない。光のごとく薫を追う。地面に向かって逆さまに落下する薫に黄柚子が追いつくと、薫は笑っていた。黄柚子は薫を抱きしめて宙に浮かび上がった。
「助けてくれてありがとう。助けにきてもらえなかったらどうなっていたことだろう……」
「もうそんな状況は嫌よ」
「純粋な君の心と、君しか持ち得ていない羽のおかげで、俺は助かった」
薫は黄柚子を抱きしめた。
「……自分から飛び降りておいて、そんなこと言わないでくれる?」
「揚羽黄柚子……俺がずっとこうしててあげるから」
薫はもう一度強く黄柚子の体を抱きしめた。
「うん」
沈みきる寸前の夕陽に照らされた黄柚子の羽は輝いていた。
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