Cパート

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 薫は朝食を食べている間ずっと揚羽黄柚子の話をしていた。  牡丹は薫の表情を見ながら黙って聞いていた。  話が終わると同時に朝食を食べ終えた。こんなに楽しそうに食事をしている姿は見たことがなかった。病院食が味気ないこともあるが、薫が自ら話をしたことに充実感を覚えたのだろうと牡丹は感じた。 「それで薫君の夢の中で捕まえた女の子がその子という訳ね」 「そうです。夢の中でこの子の心を捕まえるんだ。そして抜け殻になった体を俺のそばで見守るんです。俺の使命なんです、きっと。誰かに言われた訳ではないんですが、そんな気がしてます」 「そうなんだ。それはそれで大変ね。でもこれは薫君にしかできないことだから頑張らないとね」  薫の見るその夢は夢なのか。彼自身が作り出した単なる妄想の世界なのではないか。その世界で捕まえたそれが証拠らしい。甚だ疑問は尽きない。しかし、ここではそう簡単に答えを出す訳にはいかない。そうでなければ、こんなところに長居する必要はない……。
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