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Bパート 前
真夜中。
ほとんど人が通らなくなった山道を、風を切るように走っている赤星稲穂と花咲薫。木々の葉の間からわずかながら月の光が、二人の進む土道を照らす。
稲穂は重力をものともせず、ジャンプして進む。
薫は草に覆われた細い獣道を走る。
森の侵入者二人を攻撃しようと向かってくる巨大蛾。羽を広げると全長は熊くらいの大きさはあるだろう。
稲穂は腰に携える刀を鞘から抜き、巨大蛾に向かってタイミング良くジャンプする。そして、一閃の光とともに蛾の片羽を切り落とす。
羽を失って飛べなくなった巨大蛾は地面に落下し、土埃を巻き上げながら地を転がって行った。
すぐに別の巨大蛾が薫に向かって行く。薫はそれ気づき、第二ボタンまで外した学ランの左胸に手を入れた。懐にある銃を取り出し、巨大蛾に銃口を向ける。
次の瞬間、薫の目の前を一閃の光が縦に走った。
巨大蛾は冷凍マグロが真っ二つに裁断されたようにパックリと割れ、薫を避けるように左右を通り過ぎて行った。例のごとく、草木の上を転がる音が後方から聞こえてきた。
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