Bパート 前

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 銃口の先には、稲穂が刀を肩に置いて薫を睨みつけていた。 「なんだよ、稲穂。俺がしとめるところだったのに」  薫は銃を降ろして、悔しそうに言った。 「それ、サイレンサー付いてない。それに敵の追跡を感じる。まだ遠くだけど近づいて来てる」  稲穂は小声で言うと、薫は口を閉じ、耳をすます。ただただ森の中は静かであった。どこからか巨大蛾の羽音が聞こえた。それは稲穂たちとは違うどこかへ向かっているようだ。 「確かに俺たち以外にも、いそうだな」 「目的地の施設に行くまで、薫は撃っちゃダメよ。襲ってくる蛾は私が切るから、薫は私においてかれないように走って。あと、これ持って」  稲穂は表情をいっさい変えずに、背負っていたスクールバッグを薫に手渡した。 「えっ、自分の荷物だろ。自分で持てよ。俺も自分のがあるんだぞ」  と、言い返したところで薫の意見は稲穂には届かない。いつものことだ。素直に荷物を受けるほかない。 「あと、それ。上着貸して」  稲穂は、着ていたオレンジ色のブレザーを脱ぎ始めた。 「何でだ?」
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