4人が本棚に入れています
本棚に追加
薫は自分のバックから予備弾倉を四つ取り出した。半分に別けてズボンのポケットに突っ込み、二つの荷物を背負った。
「行こう、稲穂」
「遅れずに着いてくるのよ」
稲穂は言い終えると同時に走り出した。長い後ろ髪をなびかせて走る稲穂を追う薫。進めば進むほど巨大蛾が襲ってくる数は増えて行く。稲穂はそれらをものともせず、薫をかばいながら切り倒していく。
「だいたい、人里離れたこんな山奥の先に何があるんだ。ただちに急行して主を救出っていうアバウトな任務。セリカからの情報が少ないと思わない? こんな大きな蛾が絶え間なく飛んでくるし」
薫は思っていたことを稲穂に聞いた。無論、はっきりとした答えが返ってくることなど期待していない。
特殊能力任務機関SeLiCaの急務要請はいつもこんな感じだ。現場に指揮官がいる訳でもなく、臨機応変に対応した行動をとれというスマートな戦略である。さらにいえば後から援軍が来ることは滅多にない。
中学二年生という若さと特殊能力の意外性のみで今まで任務をこなしてきた。今回もそれはなんら変わらない。
最初のコメントを投稿しよう!