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「それもあるけど、ほとんど特殊能力の訓練だった。実験も兼ねていたみたいだけど、私以外の被験者は体質に合わなかったり、能力異常でみんな死んでいった。唯一、生き残ったのが蝶獣化をコントロールできた私だけ。良くも悪くも遺伝子が普通じゃなかったみたい。もし遺伝子が普通だったら、こうなってしまう」
稲穂は、目の前に襲ってきた巨大蛾の一匹を一振りした。
「こうなるって……」
薫は切られて動かなくなった巨大蛾を見て、稲穂に聞いた。
「完全蝶獣化の成れの果てがこの巨大蛾。人として躯体はおろか、意識もなくなる。あの施設にいる間、毎日のように目の前で完全蝶獣化していく人たちを見てた。いつか私もアンコントロールに陥ってあーなるのかもって怯えていた。けど、まだみたいね」
「まだって……。じゃぁ、今、巨大蛾がこんな飛んでくる理由は」
「おそらく何らかの理由で完全蝶獣化の種が施設内で飛散して人々の体内に入り込んでしまった」
「種?」
「種と言っても粉よ」
「さらにやっかいだ。もし、俺が吸い込んだら……」
「私みたいになれるかも……」
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