Bパート 前

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「あぁ、その時は自分のDNAが稲穂パターンであることを祈るよ」 「そうだといいわね……」  稲穂は歩みを止めた。薫もそれにならう。森が開け、草原の中心に茅葺き屋根の古民家が一軒建っていた。どう見ても使われていないように見える。 「あれが施設? 想像と違うな。白い壁に囲まれて塵一つ落ちていない研究施設だと思っていたけど……」  古民家の周囲を数匹の巨大蛾が飛んでいる不気味な光景を見ながら薫は言った。 「研究施設は薫の想像通りよ。あれはただの入口。施設自体は地下にある」 「なるほど」  薫は納得した。  と、その家の中から一匹の巨大蛾が出てきた。また続けてもう一匹。 「どんどん出てくるってことは、施設の中は……」  薫はそれ以上、口にしなかった。 「……施設の主の救出は難しそうね。中にいた関係者は全員完全蝶獣化してしまったかも」 「どうする?」  薫が訊ねた。稲穂は古民家から目線をそらそうとしない。 「中の構造を私は把握しているから、調べてくる。薫は外にいて。種を吸うかもしれないし……」 「一人で大丈夫か?」
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