Bパート 後

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Bパート 後

 薫は稲穂の背中を見届けた。しかし、森の中にわずかな空気の異変を感じた。多くの人の気配が森の奥から迫ってくる。暗い森の中に立つ木々が今にも襲ってきそうだった。  すぐに薫は胸のホルスターから銃を抜いて、古民家に走り出した。二人分のスクールバッグをかつぎ、低姿勢で古民家の中へ入った。  幸い、稲穂のおかげで家の中には巨大蛾はいなかった。壁からそうっと顔を出し、森の様子を見る薫。 「やっぱり……」  森の中で、銃の先に取り付けられた赤いレーザーポインターが蠢いていた。ポインターの数は二つや三つではない。五十、いや百個が闇の中を飛び交っていた。まるで闇夜に現れた悪魔の目のようだ。  すると、いっきにポインターが古民家に向けられた。すぐに顔を引っ込める薫。  ――撃たれるのか?  ……。  ……。 「双銃の花咲薫。お前がそこにいるのはわかっている。大人しく投降しろ。これはセリカ本部からの命令だ」  本部からの命令だと?  薫はもう一度森を見た。拡声器を持った大柄の男が一人立っていた。その男を中心に銃を持った兵士がざっと百人横に並んでいる。
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