Bパート 後

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「お願い。薫の前では私を、この蝶のままでいさせて。心の中で私を住まわせて……」  稲穂が薫の耳元でつぶやくと、羽を広げた。 「わかった。好きなだけ居ろよ……」  二人はしばしの間、無言で見つめ合った。  そして、稲穂の表情が歪んだ。肌が変色し始めている。 「そろそろ、薫の中に入らなくちゃ」  稲穂は最後にそう言って、稲妻のごとく施設に向かって飛んで行った。 「稲穂――」  薫は息が切れるまで叫んだ。  薫はすぐに兵に抱えられて、森の中を出た。  薫はものすごい爆発の音を聞いた。  薫は森の中から立ち上る炎と爆煙を見た。  薫は心に赤星稲穂という蝶々を飼い始めた。その時から。
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