Cパート

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 牡丹は、薫の病室を訪れてからお昼を過ぎるまで、ずっと薫のそばにいた。その間、泣きながら赤星稲穂の話をした。心の奥底にたまっていたモノを全て吐き出すかのように。  薫の話を聞いていると、夢の話ではなく過去に赤星稲穂という女の子とタッグを組んで任務をこなしていたのではないかと思えてきた。  薫の話が昨日の出来事の延長線上であるならば、今回の話も夢の中の出来事なのだろう。しかし、薫の話では稲穂が死んでしまったことに対して、友達というよりも恋人を失ってしまったような悲しみを帯びている。  高校生の男子が夢の中でみたことをまるで体験したかのように人前で涙をながしながら話せるのだろうか。  牡丹は自分が高校生時代に、同級生の男子が涙ながらに話す姿などみたことはないと振り返った。やはり薫が特別な感情を持ち合わせていたのだろうか。  牡丹は薫が落ち着くまで、ずっとそばにいた。同じ話を何度も繰り返そうとも、薫の目を見ながら頷いてあげた。  ただ、私はそれ以上のことをしてあげられない。何か模索しても答えは出ない。
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