第3章 三匹目 志染紅子 Aパート

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「さぁ、朝ごはん食べよう。その子、しまいましょうか」  もちろん、しまう先は標本ケースの中だ。 「紅子は一緒にいてくれるんです。紅子は大人しくここにいるんだよ」  薫はテーブルの上にティッシュの箱を置き、その上に紅子(もみこ)と名付けられた妹をイスに座らせるようにやさしく置いた。薫の動きは関節機能をもった人形を扱うようだった。  人形のように節々を動かすことができることに、牡丹は驚いた。  ベッド脇にある台の上の標本ケースを見て、この中にいる子たちも動かせるのだろうか、と牡丹はガラス越しに、膝や腕、首を観察した。  蝶の羽を生やした二人の女の子は、動かされた様子は全くない。表面上、関節機構のような作りは見られず、人と全く同じだった。実は皮膚の下に隠されているのかとも思ったが、不自然な膨らみなどはない。  ティッシュ箱の上にちょこんと座っている紅子で三人目。  薫が泣き乱した後、二日間は何も起きなかった。涙を流してすっきりしたのだろうか。
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