第3章 三匹目 志染紅子 Aパート

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 蝶の女の子を捕まえることはなく、精神的に薫は落ち着いていた。てっきり毎日連続して女の子が増えていくのかと思っていたけど、そうではないようだと朝食を食べ始めた薫を見ながら牡丹は考えていた。  何か法則らしいものはあるのか。わかっていることは、今のところ朝、薫君の手に握られているのが蝶の羽を生やした女の子ということぐらいだ。それがどういう心理状態の時に現れるのかは不明だ。 「昨日、お母さん来たよね。何を話してたの?」  牡丹は問うた。  薫の母親は、二週間に一度のペースでかかさず様子を見に病院まで足を運んできてくれる。自宅から病院まで県をまたぎ、こんな山の中まで。それでも二週間に一度という頻度はとても高い方だ。素晴らしい親御さんだ。  他の患者さんの中には、一年に一度、それ以上見に来られない親御さんも少なくない。  薫はとても良い方だ。確か薫が入院する日、お父さんと妹も一緒だったと聞いた。しかし、妹さんはそれ以来、病院には来てなかった。  昨日は、お母さんだけしかお見舞いにこなかったのに……。
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