第3章 三匹目 志染紅子 Aパート

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「ずっと妹のことばかり話してました。入院してからは会っていなかったので。妹は新しい習い事を始めたらしく、続けていけるのか少し心配しています」 「何を始めたの?」 「歌です。地元に合唱団があって、入ったみたいです」 「じゃぁ、将来は歌手になるの?」 「歌手ではないと言ってました。ピアノを引けるようになって曲を作りたいそうです」 「作曲家だ」 「えぇ。たまたまテレビで曲作りのドキュメンタリー番組を見て、触発されて」 「曲作りの番組なのに、歌を?」 「俺もそこは不思議に思ったので聞いたら、歌う人のことも知っておかないといけないからと言ってました。きっとテレビでそう言ってたんだと思います」 「へぇー。小学生なのにしっかりしてるね、妹さん」 「いつか俺のために曲を作ってくれるって」 「あら、素敵じゃない。できたら私にも聞かせてよ」 「はい……。みんなの心が安らぐようないい曲を作りたいって意気込んでます」 「みんなの心が……か」  牡丹は小さい声でつぶやいた。
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