Bパート 前

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Bパート 前

 両開きの大きなガラス扉の片方を押して建物の中に入る薫。一直線に伸びる白い廊下が待っていた。清掃がきっちり行き届いていてきれいだ。塵一つ落ちていないと思えるほど。 「時間通りに着けそうで良かった」  薫は携帯電話で時刻を確かめた。あと十分で午後九時になる。  辺りを見回すが誰一人いない。高校の制服姿でスクールバッグを肩にかけている薫。クリアファイルに挟んだ建物の案内地図を見て歩き出す。  十メートル間隔くらいにドアがあり、研究所名があれば会社名もあった。名前のない所は空き部屋なのだろうかと思いながら、入口からだいぶ歩いた所で薫は止まった。ドアには、  夢録館『世莉香』  と、印字されていた。  薫は案内状の書類をもう一度確かめると、夢録館(ゆめろくかん)世莉香(せりか)』の場所と一致していた。  そして、自分の制服を見える範囲できちっと直した。面接に来た訳じゃないんだけどと思い、少し緊張した面持ちでドアをノックした。  静かな廊下に鉄と骨のぶつかる音が響いた。中から何の反応もない。もう一度ノックする。 「はいー。どうぞ」
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