4人が本棚に入れています
本棚に追加
Bパート 前
両開きの大きなガラス扉の片方を押して建物の中に入る薫。一直線に伸びる白い廊下が待っていた。清掃がきっちり行き届いていてきれいだ。塵一つ落ちていないと思えるほど。
「時間通りに着けそうで良かった」
薫は携帯電話で時刻を確かめた。あと十分で午後九時になる。
辺りを見回すが誰一人いない。高校の制服姿でスクールバッグを肩にかけている薫。クリアファイルに挟んだ建物の案内地図を見て歩き出す。
十メートル間隔くらいにドアがあり、研究所名があれば会社名もあった。名前のない所は空き部屋なのだろうかと思いながら、入口からだいぶ歩いた所で薫は止まった。ドアには、
夢録館『世莉香』
と、印字されていた。
薫は案内状の書類をもう一度確かめると、夢録館『世莉香』の場所と一致していた。
そして、自分の制服を見える範囲できちっと直した。面接に来た訳じゃないんだけどと思い、少し緊張した面持ちでドアをノックした。
静かな廊下に鉄と骨のぶつかる音が響いた。中から何の反応もない。もう一度ノックする。
「はいー。どうぞ」
最初のコメントを投稿しよう!