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やや間が空いて、ドア向こうから聞こえてきた。甲高い女性の声だ。
「失礼します」
と、薫はドアノブをひねって中に入った。
「えっ!」
中の様子を見て思わず驚いた。
廊下とほとんど変わらない真っ白の壁に囲まれた空間が広がっていた。窓はなく、電気の光が壁に反射して夜とは思えないほど眩しい。
奥から先の声の主が小走りで薫のもとへやって来た。
「ようこそ、夢録館『世莉香』へ。お待ちしておりました。えーっと、はなざきサマ!」
一礼をして、確認用の書類を見て薫の名前を言ったのは、まだ小学生にしか見えない女の子だ。薄ピンク色のポンチョ風の羽織りを着て、幼い女の子の笑顔が相まって、薫には妖精のように映って見えた。しかし、それは一瞬のこと。
「予約してました花咲です……。君、一人?」
すぐに不安になった。だだっ広い部屋の中には他に誰もいない。
「はい、私一人です。皆様、驚かれるのですがご安心下さい。まだ十才ですが、しっかり夢録いたします。ご心配いりません。送付いたしました書類をお受けいたします」
「あ、はい……」
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