Bパート 前

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 幼くもハキハキと話す女の子に、持っていた書類を手渡した薫。こういう対応には慣れているようだ。 「スリッパに履き替えて、奥へどうぞ。靴はここに置いておいて大丈夫です」  薫は用意されていた一組のスリッパに履き替え、脱いだ靴をそろえた。ふと横に目をやると、女の子の小さな靴が壁際に置いてあった。それは小学生の女の子が履くようなものではなく、ただ白い学生上履きだった。 「こちらです。どうぞ!」  とことこと前を歩く女の子に着いて行くと、ふかふかの絨毯の上に案内された。絨毯には小さな机が一つある。女の子はスリッパを脱いでその上を歩いて机についた。 「どうぞ、はなざきサマ」  薫は少し変な気を起こしそうになっていた。夜の時間に、二人しかいない空間。一人は思春期真っただ中の男子高校生。もう一人は仕事をしているとはいえ、小学生の女の子。  俺が何かしたい訳ではないが、今までに何かしら起こっていてもおかしくない状況な気がする。高校生だけが来る場所ではない。俺より年上のいい大人だって今までにたくさん来ているはずだ。 「いつも一人なの?」  心配になって薫は聞いた。
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