Bパート 前

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 薫は紅子の説明で説明上の理解はできたが、科学的根拠は一つもない中で、不安だらけではあった。しかし、紅子の背後にある大きな壁一面の棚には、ビデオテープがずらりと並んでいる。よく見ると日付と人名がラベリングされている。 「気づかれましたか。ここにあるテープは全部私が夢録したマスターテープです。千本、千人分ほどの夢録です」 「千人? そんなに……」 「一日に二、三人、夢録する時もあります」 「じゃ、単純に三年間ずっと夢録し続けているってこと?」 「そうですね。これがはなざきサンのマスターテープです。これに見たい夢を夢録しますよ」  VHSよりひと回り小さいテープを紅子が見せた。後日、これをVHSテープに移して送られてくると書類に書いてあったなと薫は思い出した。 「まず、私が夢録蝶になります」  紅子は立ち上がった。 「ゆめろくちょう?」 「はなざきサンの夢を記録できる体になるという意味に近いです。私が夢録蝶になったら、眠気が襲ってきますが、決して抗わず見たい夢を思い描いて下さい」 「えっ! あぁ……」 「行きます!」
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