Bパート 後

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 ――やはり思い出せない。思い出そうとすると頭の中が真っ白になる。  ――ただ、こうやって歩いているだけで幸せなこの夢を忘れたくなかった。  さらに視線を上げて、彼女の顔を見る。  ――。  ――紅子!  子供の紅子ではない。薫と同じくらいに成長した紅子と手をつないで歩いていた。紅子を見ていると目が合った。少し驚き気味の薫に紅子は笑顔を見せた。  パッと薫は目を開いた。白く高い天井が見える。 「夢?」  片方の手に温かい感触があった。薫は手元を見ると、隣で眠る紅子と手をつないでいた。  そうか、夢録の……。  まさかこの子に手をつながれていたとは……。  だから、夢でもあの女性と手をつないでいたのか。  いや、元々の夢でも手をつないでいた。それははっきり覚えている。  まさかその相手がこの子……。  薫は少し混乱していたが、ポケットから携帯電話を取り出して今の時間を確認した。朝の六時半を過ぎた頃だった。確かに夢を見ていたんだと薫は理解できた。
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