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紅子は、意表をつかれた質問にしどろもどろする。この質問の返答マニュアルは用意されてなかったのかと薫は思った。
「その反応からして、俺の夢に入ったみたいだね」
「ご、ごめんなさい。勝手にお客様の夢に入ってはいけないのに。ごめんなさい……」
紅子は何度も頭を下げる。
「いや、別に怒ってる訳じゃないからいいんだけど。でも、どうして? いつもそうなの?」
薫は優しく聞いた。
「いつもじゃないです。はなざきサンの夢にすごくきれいな海が見えたから」
「海?」
「本当の海を見たことなくて、もっと近くで見たいと思ってはなざきサンの夢の中に勝手に入ってしまいました。本当にごめんなさい」
夢の中に入るには、夢に登場している人の誰かになる必要があるとも説明した紅子。その彼女の目に涙が溜まっている。
なんだろう。ふつふつと沸き上がってくる赤く熱を帯びたこの感覚は……。
薫の心に今まで感じたことのないものが生まれた。自分で心臓を握っているようだ。薫はそれが何なのか考えてもわからない。
「もっと小さい時にお父さんやお母さんと一緒に海に行ったりしなかったの?」
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