Bパート 後

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 薫は紅子を怒鳴った。紅子は怯え、静かに涙を流した。 「君は悪くない。君は悪くない」  薫は紅子を抱き寄せ、そのまま紅子をかかえて立ち上がった。ここまで来て、引き下がってたまるか。どんな問題が起ころうと俺が責任を取る。 「たかが高校生の男子に何ができるかわからないけど……。本当の海を見に行こうよ!」 「……」  紅子は困った顔をしている。どこの馬の骨ともわからない男にここを出ようと誘われているのだから。それでも……。 「自分の目で見て、手で触ってみなよ。俺の夢なんかで見るよりよっぽど凄いから!」 「……うん」  紅子は小さく頷いた。はっきりと紅子の返事を聞くと、薫は紅子を抱きかかえたまま自分のスクールバッグを持って出口へ走り出した。スリッパを放り、靴に履き替える。紅子の内履きはそのままで薫はドアを開けて廊下に出た。  突然、サイレンが鳴り響いた。 「なんだ? 何の警報だ?」  ギンギンと耳が割れそうな音だ。 「たぶん、私のこれだと思う」  紅子が袖をまくって腕を見せると、ブレスレットのような金属がはめられていた。
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