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薫はだんだん大きくなっていく島を見上げる。島の中心に行くほど山は高くなって木々に覆われている。夏の陽が、葉をより緑色に魅せている。
「今じゃ、島に取り憑かれた子だの、島民の帰りをけなげに待つ犬と呼ばれるようになっていてな。少し経てば、生活できなくなって島を出るようになると思ってたがな……」
「なおさら興味が湧いてきましたよ。きっとこの島に惹かれているんですね。島から離れられない理由が知りたくなってきた」
「ははは! 変わったお兄さんだな。だがな、あまり深入りしない方がいい。島には島の決まりみたいなもんがあるからよ」
漁師は笑って言っていたが、逆に忠告をしているように薫には聞こえた。
「はい。その辺りはわきまえておきます」
薫はしっかりと返答しておいた。
――そう。
――どこに行っても、環境が変わろうと、この国はそうだ。人々も……。
――規範からはみ出る者を嫌うのだ。
――見えない規範を作り、知られたくないことも好きなようだ。
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