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「私は、私の背中を押してくれる誰かを待っている」
海を眺めている女の子は、微動だにせず薫の言葉が言い終わる前に話し出した。
「……」
薫は一瞬、何も考えられなかった。何を言っているの、この子……と。
薫は彼女の細くなった足元を見て、その意味をすぐに理解した。
でも、どうしたらいいか……。
この島で一人になってから満足に栄養を摂れていないのか、スラッとした足がさらに細くなっていることが見てわかる。その両足が自由にならないように、足首をロープで縛ってあった。そのロープの先をたどっていくと、二つ重なったコンクリートブロックにロープは結ばれていた。そのブロックの先端は海に突き出ていた。
――自ら海に飛び込む勇気がないってことか。
「あなた、私の背中を押してくれない? 誰も見てる人なんていないから……」
無表情かつ無感情に女の子は言った。
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