Bパート 前

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「結び目、緩かったから海に引っ張られる前にほどいちゃった」  薫は海面に近い所まで降りて行き、女の子に手を差し伸べる。 「この島に一人で残ってるって聞いたよ。少し話を聞かせてよ。できれば、俺も今と違った形で君の背中を押したいからさ」  女の子の家は、船着場から坂を登った途中にあった。一軒家だった。女の子は着替えて出て来た。 「やっぱりね! 絶対そうだと思ってたんだ。ワンピース姿も良かったけど、島スタイルはその格好がいいよ!」  薫はTシャツ、短パン姿に麦わら帽子を被った女の子を見て言った。 「あ、ありがとう……」 「麦わら帽子好きなの?」 「子供の頃からずっと被ってるから。被ってないと落ち着かないの」 「へー。あ、俺、花咲薫。十七才。高校二年」 「私は、屋久島るみ。同じ十七才。でも高校には行ってない。って、見ればわかるよね」  るみは苦笑いをした。 「この島を案内してよ」 「観光になるものなんて何もないわよ」 「この島、せりか島って言うんだっけ。それでも屋久島さんはこの島に一人残ってるのは、それなりの理由があるからでしょ。それも教えて欲しいな」
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