Bパート 前

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「島民だけじゃない。本島の人たちもこの島を嫌ってる。その訳は、島の名前の由来。島の反対側に行けばわかる」 「今、そっち向かってる訳だ」 「えぇ。でも、そっちは後でね。先に私がこの島で大半を過ごす場所へ案内するわ」  るみは、脇道から林道へと入っていった。林道は、木々によって太陽が遮られていて涼しく感じる。しかし、上り坂が続き、薫の息はすぐに上がった。 「ここ」  るみは立ち止まって、息を切らして後からやってくる薫に言った。薫はハァハァ言いながら顔を上げると、林の一部が開け、畑があった。 「何か育ててるの?」  ほとんどの土は乾ききっていて、風が吹けば土埃が舞うほどだ。 「ミニトマトときゅうりだけ。他は全然育たなかった」  るみは、実の様子を見る。まだ小さく青いものもある。 「自分で耕したの?」 「まさか。もともと畑として使われていた場所。だいぶ使われていなかったみたいだけど。試しに種を蒔いてみたの。実際、成長しているところを毎日見てると楽しいのね。私はこういう生活の方が向いているのかもしれないと、勝手に思い込んでる」
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