Bパート 後

2/11
前へ
/193ページ
次へ
「心の隅にそういう気持ちは少なからずあったけど、本当は自分の住んでいる所が嫌で出て来ただけなんだ」  薫の表情から笑顔がなくなった。 「どんな所に住んでるの?」  るみは問うた。頭の中で本土の土地を思い浮かべる。 「おおざっぱに言えば都市部」 「都会っ子ってやつね。私の友達は皆、都会に憧れて島を喜んで出て行ったけど」 「それはそれでいいと思う。単純に俺の心の問題なんだ。コンクリートの上にビルやマンションがあって、その隙間を這いつくばって歩く人混みが好きじゃない」 「そういうのって慣れるんじゃないの?」 「んー、どうかな。子供の頃から今でもそこが生活の場だけど、良い所とは思えない。都会にはない、この大自然に囲まれていたいっていう気持ちの方が大きい」  薫は吹く風を浴びるように両腕を広げた。 「それは、単に薫君のないものねだりよ」 「えっ?」  薫はるみに意表を突かれ、上げていた腕が自然と下がった。まるで犬のしっぽのようにしゅんとなった。 「本当は今の生活に満足していて、新しい気持ちに触れたいだけ。都会から離れて来たと言っても、時間が来ればそこへ戻るんでしょ?」
/193ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加