Bパート 後

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「……そうだけど」 「離島した友達は高校受験の時、単に本土や都会に行きたいという仮の理由を作って高校を決めていた。軽い気持ちで憧れても、前に進めやしない。その場の環境や流れに打ち勝つくらいの気持ちがないとダメ……だと思う」  るみは強く言い過ぎたなと、言ってから思った。 「るみの言う通りだよ。俺もそう思う。この旅、いや旅行だって計画的に帰ることも考えている。その時点で逃げているようで逃げてすらいない。その点、るみはそれを貫き通そうとしているから素敵だと思った」  薫の目は真剣にるみの目を見つめていた。 「……そう」  るみは肯定とも否定にもとれるように答えた。 「こうして、ここへ来なければわからなかったけど、るみと出会えて良かった。出会えてなかったら単なる旅行で終わっていたよ」  薫は微笑んだ。 「まさか、このまま島に残るとか言い出さないよね?」 「帰るよ、ちゃんと。俺なりの切り口で今の生活を見つめ直すつもり」 「そう。良かった。その方がいいよ」  るみは肩をなで下ろした。 「どうして? 俺に残って欲しかった?」  薫は冗談めかして聞いた。
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