Bパート 後

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「いいえ。もし、残るって言ったらこの島は、やっぱり癖のある島なんだって、私が納得してただけ。その理由がこれよ!」  るみが指差す先、歩いて来た道路を挟んで山側の中腹から海岸にかけて無数の墓石が建ち並んでいた。  最近のものではなく、ずっと昔からそこにあり、ほとんどが雨風や海水で風化して丸みを帯び、表面はゴソゴソに荒れていた。そして、台風が過ぎ去った後のようにボロボロの木クズが何層にも積み重なっていた。  それらが海水をかぶり海岸側から異臭が生暖かい空気と混じって漂ってくる。一部に小虫の大群が黒い固まりのように群がっていた。荒れ果てた廃墟を見るよりおぞましかった。  薫は船着場からこの光景は想像できなかった。 「せりか島。せりかを漢字で書くと、世を離れ下る島。それで世離下島」 「世離下……島……」  薫は復唱した。 「昔。と、いってもいつなのかわからない昔。本土で暮らせなくなった人が世間を離れ、船で下って住み着き始めた島らしい。でも、ある時を境にしてその人々は死んでいなくなる。誰もいなくなるのにどうしてお墓があるのかよくわかってない。と、言い伝えられている島よ、ここは」
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