Bパート 後

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 匂いで顔を歪ませている薫を見たるみは続けて、 「さっき、薫君が島に残るって言ったら、この言い伝えが本当なのかもって思うところだったんだけど。今のところそうじゃないようね。もしかしたら、世の中から離れたい薫君をこの島が呼び入れたとしたら、それが事実になりそうね」  と、るみは笑って薫をからかった。しかし、薫は笑えなかった。 「もし、るみがこの島にいなかったら……」  薫の声は少し震えている。 「この島にとどまり続け、ある時を境にして誰が作るお墓の一つに薫君が入っていた」  るみにそう言われて、薫はつばを飲んだ。 「るみは命の恩人」 「ふふっ。そんなの大袈裟よ。薫君、もともと帰る予定だったんだから。言い伝えみたいなことにならないよ」 「そうだよね……」  と、薫は笑ってごまかす。 「意外と臆病ね、薫君。やっぱり、都会っ子って感じがする」  薫はため息をし、俺って、やっぱりそうなのかぁと思った。 「あと、最後にもう一つ。私が好きな所を見せてあげる。着いて来て」  るみは、山の中へと続く道を歩き始めた。お墓の真ん中を突っ切って林道へと入っていく。
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