Bパート 後

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 るみは周囲でも一番太い木を触った。 「このせりか島にしか生えない木なんだ。せりか島木っていうの」  薫もその木に触った。幹に腕をまわしても一人では届かない。 「きれいな木だ。とても硬そう」  薫はコンコンとドアをノックするように拳で木を軽く叩くと、音はほとんど響かず、ぎっちり中身が詰まっている感触を覚えた。 「このせりか島木が、島で一番大きな木。ある時、この木は根元すら残らないほどの爆発をして、バラバラに砕け散るんだって。それがさっきのお墓にかぶっていた木クズよ。砕け散った大半の木クズはお墓の方へ飛んでいくみたい。もう六十年は爆発が起きてないの。いつか私はその爆発の瞬間を見てみたいと思ってる」 「へぇー。それは神秘的な光景だろうな。そうやって種子を遠くに飛ばそうとしているのかもしれない」  薫は高く伸びる木を見上げた。 「言い伝えによれば、爆発する寸前にこの木自体が女性の叫び声のような音を出すらしい。木全体に細かいひびが入る音なんじゃないかって言う人もいるけど、真相はわからず。島民にとって気味悪いことには変わらないんだけど」 「俺もその瞬間を見たいな」
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