Bパート 後

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 るみの目に涙が溜まっている。次の瞬きをすればこぼれてしまうだろう。薫はその言葉がるみの本心の裏返しだとわかっていた。  その時――。  小さな神社の扉が開き、真っ青の羽の蝶が出て来た。青白い光に包まれた蝶はヒラヒラとるみに向かって飛んでいく。るみの目の前でパッと消えると、るみの背中に先の蝶と同じ真っ青の羽が生えていた。そして、るみが青白く光り出した。 「何、これ……」  るみはパニック寸前だった。  『最後の島の民よ。お主の気持ちは十分に伝わった。一人になったお前をずっと見ていたぞ』  二人の心中に直接響き渡る声。 「えっ、誰?」  るみは周りを見回すが、薫以外誰もいない。薫も辺りを見回している。  『この島の主と言えばわかりやすいか』 「この島の……」  るみは扉の開いた神社を見つめた。  『悪いが、お前がこの島で朽ち果てる姿を見たくはない。聞く耳をまだ持っているなら、少年の声に耳を向けなさい』  るみの脳裏に倒れて死んでいる自分の姿が鮮明に浮かんでいた。島の主が見せたものではない。るみ自身が頭の片隅で描いていたものだった。  るみは薫に目線を向けた。
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