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薫は牡丹を見ていないが、牡丹は笑顔で言った。
「目が覚めてすぐ汗を流したかったんです。いつもの熱いタオルで体を拭くだけだとスッキリしないと思って……」
「もう次からは遠慮しないで言ってよ」
せめて病室からいなくならないでと、続けようかと思ったが牡丹はやめておいた。
「んー。それは牡丹さんに一方的で申し訳ないというか……」
薫は顔を下に向けているせいか、かなり遠慮しているように見える。
「はいはい。そういうことはここでは言わない。むしろ、薫君が遠慮しないで色んなことを言うための場所でもあるのよ。思う存分、私を頼りにすればいい!」
と、牡丹は自分の胸を叩いた。以前にもこんなやりとりをした記憶があるなと牡丹は思っていた。すると薫は顔を上げて牡丹を見た。
「えぇ、適度にしておきます。あれこれいうと牡丹さん、ぐちぐち言って怒るし……」
笑顔の薫が言う言葉は、冗談ではなく本音に近いので、牡丹は心にとげを刺されているような感じだった。
「それはそうでしょう。朝、病室にいないんだもの。誰だって……。少しは反省してよね」
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