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牡丹は語気を強めて言った。強めずにはいられなかった。
「そうですね」
「薫君だって、そのるみって人を放っておけなくて心配だったんでしょ。たぶん、それに近いことだと思うよ」
牡丹はガラス板の中で、麦わら帽子を被った片羽の女の子を見た。
「誰かと一緒に前に進みたいと思っていたんだと思います。やっぱり一人だと心細いというか。お互いに頼りにできたら、最高です」
薫は、片羽の紋様が描かれた自分の手の平を見つめた。
薫君。私もあなたと一緒に前に進みたいと思っているのよ。薫君だって、一人で心細いでしょ。私を頼りにしてくれてもいいのに……。でも、なぜかしら。いつも見ているのは、その子たち。私ではない。
牡丹は心の中で薫にそう語りかけていた。
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