第一幕 二話

2/5

31人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
始まりは、本当に僕の不注意だったんです。美術館で夜警の仕事をしてたんですけど、その時に壺を誤って割ってしまって。 これは大問題になるぞって思いました。ネットで調べたら、そういう賠償は100万は下らないケースがざらにあるって書いてあったりして。そんな額絶対に払えないし、壺なんて山ほどあるし、そのうちの一つが無くなっていても誰も気づかないだろうって考えて、隠すことにしたんですよ。そのまま破片を持ち帰って。 僕の見立て通り、誰も壺が一つ欠けていることに気が付く者はいなかった。全く誰にも僕の行為が見破られることはなく、本当に上手くいった、言わなくて良かった、と思っていたんです。 ただ、ちょうどその時から、夜警をしている時に妙なことが起き始めて。 巡回の時に、後ろから妙な気配を感じるようになりました。誰もいないはずなのに、後方から微かに足音が聞こえてきたり。 最初は気のせいかな、と思ってたんですが、毎日のようにそんなことがあって、徐々に怖くなってきたんです。けど、その時までは特に害もなかったから、気にしないことにしてたんですけどね。 ただ、ある時から、様子がおかしくなったんです。 気配を感じた、足音が微かに聞こえたな、と思ったら、その方向から、コツと何かが落ちるような音が聞こえたんです。何かな、と思って見に行ったら、壁に掛かっていた絵が落ちていたんですよ。 これは誰かの悪質ないたずらかもしれないなと思って、館内を探し回ったんですけど、結局誰もいなくて。
/84ページ

最初のコメントを投稿しよう!

31人が本棚に入れています
本棚に追加