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第一幕 二話
「あ、佳苗ちゃん、お客さんだよ」
翌朝、まだ日が昇りきっていないような時間に、早くも客は現れた。
「朝早くにすいません、ここって、怪談相談所、ですか…?」
若そうな男性だった。
「僕、古川っていうんですけど、凄く怖い体験をして、それで…」
気の弱そうな古川という男性は、おどおどと頭を掻きながら訥々とそう言った。
「ここに来て下さったんですね。ありがとうございます」
「ここって、お祓いとかもしてくれるんですよね?」
「いえ、お祓いを出来るような者はおりませんが、多少のアドバイスや、状況によっては現地に赴かせて頂く場合も…」
などと私が説明していると、
「お兄さん、お祓いしたいの?じゃあ私がやってあげる。怖いの怖いの、飛んでいけ~!ほら、どう?」
満面の笑顔でお祓いではなくおまじないをする夢奈に、古川は苦笑いを浮かべた。夢奈はホラーになると大人顔負けだが、時々見せる愛嬌たっぷりな姿には、いつも元気をもらっていた。
「こら、夢ちゃん。失礼でしょ、そんなことしたら」
私の注意に反して、古川が笑顔を見せた。
「なんだか僕、話そうかどうか凄い迷ってたんですけど、こういう明るいところなら、上手く伝えられそうな気がします」
「私は理解力半端ないからね。安心して話して」
夢奈がそう促すと、古川はゆっくりとソファに腰を下ろしたのだった。
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